まなびのコンパス
リポート
REPORT

【後編】オンライン講座体験セミナー 「瀬古利彦、渡辺康幸 スペシャル講座~マラソン、駅伝の魅力」

9月18日に校友の皆様を対象に、オンラインでの授業を体験いただくとともに母校とのつながりを感じていただくことを目的に、オンライン講座体験セミナー「瀬古利彦、渡辺康幸 スペシャル講座~マラソン、駅伝の魅力」がエクステンションセンターと早稲田大学校友会の共催で実施されました。本記事では、当日の対談内容の後編を抜粋・編集してお送りします。前編はこちらからご覧ください。

写真左より、渡辺康之さん、瀬古俊彦さん、初田啓介さん

 

苦労を経験したからこそ、素直になれた

初田さん:瀬古さんの学生時代のお話もうかがいたいと思います。瀬古さんは1年浪人した後、早稲田大学に入学し、競走部にも入部されています。瀬古さんが入部される前年、早稲田の競走部は箱根駅伝に出場しなかったそうですね?

瀬古さん:ええ。予選で落ちてしまい、出場権を得られませんでした。ちなみに昭和40〜50年の始め頃まで、早稲田の競走部は低迷の時代にいました。低迷の時代にあたる昭和53年に、私が早稲田の競走部に入部したんです。

初田さん:瀬古さんは大学1年生の時、箱根駅伝で2区のランナーを務められたそうですね。

瀬古さん:当時の早稲田は、本当に弱いチームでした。高校時代の実績を考慮すると、私がチームでは一番だったので、2区のランナーを任されました。でも、その年の箱根駅伝では、早稲田は15チームのなかで13位。私も区間11位だったので、ひどい成績だったと思います。

初田さん:瀬古さんが所属していたにも関わらず、かつての早稲田の駅伝チームは、いい時代ではなかったのですね。

瀬古さん:でもね、私は浪人も、アメリカでの留学も経験しました。10代の青年にしては、苦労したと思います。こうした苦労に比べれば、早稲田大学でのマラソンの練習は苦しくありませんでした。また、当時の競走部の監督だった中村清さんの指導も、素直に受け入れることができました。苦労を経験したからこそ、素直になれたんだと思っています。

初田さん:瀬古さんは大学3、4年生時に、区間新記録を記録されています。瀬古さんに引っ張られるかたちで、大会での順位も上がっていったわけですが、優勝を勝ち取ることはできませんでした。優勝できなかったことに対し、悔しい思いはありますか?

瀬古さん:いや、悔しさは全くありません。当時の競走部員のほとんどが、一般受験を経て大学入学と入部を果たした人でした。そうした状況下で、駅伝のチームはよく頑張ったと思います。

 

現役時代、支えになったのは“駅伝力”

初田さん:コロナ禍にある今、練習や合宿を実施する際に制限が設けられる場合もあると思います。早稲田では、箱根駅伝のためのトレーニングとして山での練習も取り入れているそうですが、そうした練習も実施しづらくなっているのでしょうか?

渡辺さん:そうですね。箱根駅伝のような、特殊区間を走る大会に向けた練習がしづらくなるのは痛いと思います。ただ、制限があったり、条件がそろわなかったりするなかでトレーニングを積むことで、選手のメンタルが鍛えられるケースもあるようです。今の若い選手に足りないのは、根性やメンタル面での強さだと感じています。毎回、恵まれた環境で練習や合宿を行うのは、考えものだと思いますね。

瀬古さん:マラソンをこなすうえでは、確かに根性は大事です。現代では、「昭和的だ」「古い」といわれてしまう考えではありますが。やはり根性や耐える心が、長距離ランナーには必要です。それに、苦労を経験した選手ほど、忠告してくれる人の声に耳を傾けると思います。でも渡辺くんは、学生時代はちょっと反抗的だったよね(笑)。

渡辺さん:当時、監督だった瀬古さんの忠告を聞かないこともありましたね(笑)。

瀬古さん:一度、言い合いをしたこともあったよね。でも、渡辺くんは、試合では必ず結果を出してくれました。「こんなに安定感のある、すごい選手はいない」と思いましたよ。渡辺くんが大学4年生の年に出場した全日本大学駅伝でのエピソードは、いまだに印象に残っています。早稲田はトップのチームよりも1分半も遅れていたにも関わらず、渡辺くんにタスキが渡った瞬間、瞬く間に差が縮まって大逆転したんです。結果、早稲田は4連覇を果たすことができました。

初田さん:当時、「1分半の遅れだったら挽回できる」と感じたのでしょうか?

渡辺さん:挽回できるとは思いませんでしたが、自分の“駅伝力”を信じていました。当時の私には、タスキをもらった瞬間に別人になれる感覚があったんですよね。タスキをもらうと、「絶対に勝たなきゃいけない」と力がみなぎるんです。

初田さん:なるほど、駅伝力! こうした感覚が、個人競技とチームスポーツの異なる点といえそうですね。

 

優勝を狙える「日本三大駅伝」は、まさに必見

初田さん:これからいよいよ、駅伝シーズンが始まります。ぜひお二人に、今シーズンの展望をお話していただきたいと思います。まずは10月10日に「第33回出雲全日本大学選抜駅伝競走」が行われますね。

渡辺さん:今年の早稲田大学は、優勝を狙えると思います。10,000mを27分台で走れる選手が3人もいるんですよ。優秀な選手が多くいる、かなり強いチームだと思います。

瀬古さん:1区間でもミスすると、それが致命傷になるのが駅伝です。1区、2区でうまく流れに乗り、6区で勝負するのがいいでしょう。今年の早稲田のライバルは駒澤大学になると思います。早稲田が駒澤大学より30秒早く、6区に到達するのが重要だと考えています。

渡辺さん:東京国際大学も、早稲田のライバルになるでしょう。イェゴン・ヴィンセント選手がいますから。彼は本当に強い選手ですよ。

瀬古さん:それに順天堂大学には、東京オリンピックの「陸上男子3000m障害」で7位入賞を果たした三浦龍司選手がいます。彼は駅伝でも強い走りを見せるはずですよ。今回の出雲駅伝では、早稲田、駒澤の優勝争いに、東京国際や順天堂などが加わってくるかたちになると思います。

初田さん:さて、出雲駅伝が開催された後は、「大学三大駅伝」の一つといわれる全日本大学駅伝が行われます。

瀬古さん:早稲田は、全日本大学駅伝では何度優勝したんだっけ。私がコーチを務めていた期間に、合計4回優勝していますが。

渡辺さん:当時、早稲田は4連覇を果たしましたね。そして、私が監督を務めていた間に1度優勝しました。なので累計5回、優勝しています。

瀬古さん:渡辺くんが早稲田大学の競走部に入部した1992年に初優勝し、さらにその後、3年連続で優勝したんです。当時と今年のチームの状況が、似ているように思います。もし今年優勝したら、11年ぶりの優勝ということになりますね。

渡辺さん:前半の区間でブレーキがかかってしまった場合、駅伝では勝つことができません。全日本大学駅伝は、どの区間も同程度の距離なので、確実にたすきをつないでいくのが重要です。それができれば、優勝できる可能性は十分にあります。

初田さん:そして年明けには、東京箱根間往復大学駅伝競走も行われますね。

瀬古さん:そうですね。ただ、早稲田には、“山の神”と呼ばれるような選手がいないんです。これは一番の弱点ともいえますが。他校に比べて高校時代強かった選手を多く入学させられないので、平地を走る選手を育てるのに精一杯で、山を走れる選手を育てる余裕がないんです。

渡辺さん:箱根駅伝は山岳コースを走るので、特殊なレースといえますね。

瀬古さん:山岳コースを走る場合、“センス”が必要ですね。平地では早いのに山では力を発揮できない選手もいれば、反対に、平地では目立たないものの、山では驚くような走りをみせる選手もいます。

渡辺さん:しかも3年に一度くらいの確率ですが、登りのコースで向かい風が吹くことがあるんですよ。すると、走力の有無にかかわらず、選手間の差が大きくなってしまいます。

瀬古さん:でも今年はいい選手がそろっていますし、早稲田にとってチャンスの年です。結果が非常に楽しみですね。

 

***

対談では、校友からの質問に瀬古さん、渡辺さんが回答するコーナーも設けられました。「マラソンの30キロ以降、スピードアップするための対策は?」という質問に対し、瀬古さんが「キプチョゲ選手になりきりましょう!」と回答し、会場で笑いが巻き起こるシーンも。最終的に、渡辺さんと議論したすえ、「プレート入りのシューズを履きましょう。足が疲れにくくなり、コース後半でも足がスッと前に出ます」というユニークかつ実践的な回答にまとまりました。

早稲田大学では、早稲田に集って学ぶ方々に知性と感性を磨いてもらうため、時代や環境の変化に応じた教育環境を整えるなど、日々歩みを進めています。公開講座も例にもれず、エクステンションセンターのオープンカレッジでは教室での講座のほかにオンラインでのライブ講座、オンデマンド講座、教室とライブを同時に行うハイブリッド講座なども充実しています。今回の講座への参加により、最新の大学の授業環境を校友の皆様に体験いただいたことで、全国の校友の皆様にオンラインでの交流や講座の受講の輪が広がることが期待されます。

【本記事の前編はこちらからご覧ください】

<<
前のリポート