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【前編】オンライン講座体験セミナー 「瀬古利彦、渡辺康幸 スペシャル講座~マラソン、駅伝の魅力」

新型コロナウィルスの影響により、学部や大学院の授業だけでなく、エクステンションセンターが手がける公開講座「オープンカレッジ」も、多く講座をオンラインでも展開しています。9月18日、校友の皆様を対象に、オンラインでの授業を体験いただくとともに母校とのつながりを感じていただくことを目的に、オンライン講座体験セミナー「瀬古利彦、渡辺康幸 スペシャル講座~マラソン、駅伝の魅力」がエクステンションセンターと早稲田大学校友会の共催で実施されました。本セミナーでは、選手や指導者、解説者として名高い瀬古利彦さんと渡辺康幸さん、そしてTBSアナウンサーの初田啓介さん(MC)が登壇し、マラソンと駅伝の魅力などを語り合いました。なお、対談では、「東京2020オリンピック競技大会」にまつわるエピソード、今年の「大学三大駅伝」の結果予想など、興味深い話題も飛び出しました。本記事では、当日の対談内容の前編を抜粋・編集してお送りします。後編はこちらからご覧ください。

写真左から

瀬古利彦さん(DeNAアスレティックスエリート アドバイザー・1980年教育学部卒)

渡辺康幸さん(住友電気工業株式会社 陸上競技部 監督・1996年人間科学部卒)

初田啓介さん(株式会社TBSテレビ アナウンサー・1993年第一文学部卒)※MC

 

圧倒的な強さをみせたエリウド・キプチョゲ選手

初田さん:今夏、「東京2020オリンピック競技大会」が開催されました。熱い夏となりましたね。

瀬古さん:そうですね。それに開催期間中、暑い日が多くありました。猛烈な暑さから選手たちを守るため、女子マラソンのスタート時間が1時間早まるというひと幕もありました。なお、スタート時間を変更する旨の連絡を受けたのは、競技が行われる日の前日の夕方です。マラソンの選手たちは、いつも明朝の2時や3時から練習を始めるので、午後7時には就寝します。選手たちにとっては本当に急な変更となったので、とても大変でしたね。でも一流の選手は、どのような状況下に置かれても受け入れて、走らなくてはいけません。

初田さん:暑さや急な変更に、翻弄されたひと幕があったと。それにしても、男子マラソンで金メダルを獲得したエリウド・キプチョゲ選手は、力強い走りをみせてくれましたね!

渡辺さん:彼の実力は、ほかの選手と次元が違いますよね。フルマラソンを1時間59分で完走した記録も持っていますから。彼になかなか勝てないのは、当然だと思います。

瀬古さん:走っている最中の姿も表情も、余裕そのものでしたね。まるでジョギングを楽しんでいるようでした。おそらくキプチョゲ選手は、2024年に開催されるパリオリンピックでも優勝するでしょう。キプチョゲ選手がパリオリンピックでも優勝したら、「オリンピック3連覇」といういまだかつてない記録が作られることになります。

 

選手に重圧がのしかかった2年間

瀬古さん:2019年9月、東京オリンピックのマラソン日本代表を選考するため、「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」を開催しました。ここでマラソン日本代表を決めましたが、結局、オリンピックの開催が延期されたことで、彼らはおよそ2年間、オリンピックの重圧を感じることになりました。この期間、普段どおりに走ることができていたのは大迫傑選手と一山麻緒選手のみで、そのほかの選手は怪我や体調不良に苦しみました。

初田さん:本来であれば、東京オリンピックを迎えるまでの準備期間が1年であったところが、2年になってしまいましたからね。

瀬古さん:オリンピックはほかの大会以上にプレッシャーがかかる大会です。選手たちは、周囲から毎日のように「頑張れ」「メダル取れそう?」と言われるんですよ。そんな状況が2年間も続いたら、それは辛いですよね。

渡辺さん:選考レースが終わってからオリンピックが開催されるまでの期間は本来、何カ月くらいがいいのでしょう?

瀬古さん:人によって違うでしょうね。ただ、半年から1年の期間が設けられるケースが多いです。マラソンの業界では、年に2回、ターゲットレースに出場するのがいいとされています。本来、MGCが終わった10カ月後にオリンピックを迎えるはずでしたが、計画通りにいきませんでしたね。でも、大迫選手が6番に入賞しました。彼は非常に頑張ったと思いますよ。

渡辺さん:今回のオリンピックでは、大迫くんは10〜15位に入賞するのではと予想していました。6位入賞という結果を出せたことは、本当に素晴らしいと思います。

 

「指示待ち」タイプの選手は、強くなれない

初田さん:東京オリンピックの男子マラソンは、大迫傑選手の「現役ラストラン」となりましたね。

瀬古さん:引退するのはまだ早い、もったいないな、と思う部分はあります。でも、大迫選手はストイックだし、自分のなかではやりきったような感覚があるのでしょう。それに彼は、単身アメリカに渡り、新しい練習方法を開拓した経験もあるユニークな選手です。我々の想像を超える考えを持っているのかもしれません。

渡辺さん:そうですね。それに大迫選手は、自分の意見をはっきり伝える選手です。僕が早稲田大学競走部の駅伝監督を務めていた間、何度も言い合いになりました。でも強くなる選手は、芯が強いので、自分の意見を主張するものなんです。

瀬古さん:大迫選手は、有言実行するタイプです。自分の意見を通す代わりに、きちんと記録も出しますからね。

初田さん:選手のなかには、指示された内容にだけ一生懸命取り組む人もいるのでしょうか?

渡辺さん:そういうタイプの選手もいます。むしろ昔は、監督が指示した内容を選手が反論せずに取り組むスタイルが一般的でした。でも今は、監督と選手が話し合って練習内容を決める「コーチング」と呼ばれるスタイルが主流です。ただ、コーチングは選手が自立しているからこそ成り立つスタイルです。自立していない選手は、おのずと「指示待ち」になりますし、隠れてサボることもあります。

瀬古さん:「指示待ち」タイプの選手が強くなることは、まずありません。監督に指示された内容だけでなく、プラスアルファの練習ができる選手が強くなれます。マラソン競技の場合、監督から「足に負担がかかるから、今日はこれ以上走るな」といわれるような選手が理想の選手といえます。

例えば、東京オリンピックの女子マラソンで8位になった一山麻緒選手。一山選手の練習内容には驚かされますよ。いわゆる”鬼メニュー”を自らこなしますから。練習する姿から「メダルを取ろう」という気概を感じましたね。

≪前編はここまで≫

後編では、瀬古さん、渡辺さんの現役時代の話や今年度の競走部駅伝チームのお話しなどをお届けします。こちらからご覧ください。

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