まなびのコンパス
リポート
REPORT

興味・関心を見つけて伸ばし、人生の後半をより豊かに生きる

 

5月29日(土)に開催されたオンラインイベント「人生100年時代におけるライフデザイン~人生の後半をどう生きるか~」では、基調講演に加え、4名の識者によるパネルディスカッションが行われました。パネルディスカッションのテーマは、「ライフワークを見つけて実践するということ」。このテーマのもと「定年後の人生」にまつわる意見や体験談が語られました。また、聴講者から寄せられた質問をきっかけに、さらに具体的な意見が引き出されるシーンもあり、大いに盛り上がりました。

イベントリポートの後編となる本記事では、当日のディスカッションの内容を抜粋・編集してご紹介します。

 

・モデレーター

守口 剛(早稲田大学商学学術院教授、同大学社会人教育事業室長)

 

・パネリスト

楠木 新さん
1954年、神戸市生まれ。京都大学法学部卒業後、生命保険会社入社。人事労務畑を中心に経営企画、支社長などを経験。体調を崩したことをきっかけに50歳から職務と並行して取材・執筆・講演活動に取り組む。15年定年退職。18年から神戸松蔭女子学院大学教授。著書に『定年後』『定年準備』『定年後のお金』(いずれも中公新書)、『人事部は見ている。』(日経プレミアムシリーズ)、『就活の勘違い』(朝日新書)など多数。

 

清水 孝幸さん
1962年、東京都生まれ。慶応大学文学部(社会学専攻)卒。85年に中日新聞社(東京新聞)入社。静岡総局、東京社会部などを経て、95年から政治部。首相官邸、与党、野党、外務、防衛、総務省などを取材。論説委員(政治担当)、編集局デスク長(硬派担当)、政治部長の後、2019年7月から現職。著書に『小沢一郎という「禁断の果実」』(講談社)、『政地巡礼』(G.B.社)、『定年が楽しみになる!オヤジの地域デビュー』(東京新聞)など。MXテレビのニュース番組「FLAG」コメンテーター。

 

本田 恭助さん
1957年生まれ。1980年に大学新卒として花王株式会社(当時 花王石鹸株式会社)に入社。2017年に定年退職後、シニア人財として再雇用。定年までに主に3つの分野を担当。商品開発、広告メディア・ブランドコミュニケーション、そして国際事業戦略。50歳頃からの約10年間、田舎の父母の介護、老人介護施設探しなどに奔走、地域のひとに多く支えられた。何か地域社会に貢献したいと思い、再雇用を機に希望してNPOの分野に出向。企業時代に蓄えた経験や知見を活かしながら、NPO業務の他、希望する企業人財がNPOで活躍できるような道筋を模索・構築を夢見ている。

 

加藤 香代さん
1966年生まれ。現在、都内のインターナショナルスクール「ユナイテッドスクールオブ東京」で幼児、小学生に日本語を教えている。2017年まで25年間、川崎市で公立小学校の教員として勤務。その間、市総合教育センタ―研修員としての多文化共生教育の推進、マレーシアの日本人学校に3年間の派遣経験を得た。派遣後、外国人集住地域での日本語教室担当等を通して、多様な背景を持つ子どもたちと関わってきた。子どもたちのことばの学びを支える仕事をライフワークとしたいと考え、50歳で教員を早期退職。本学日本語教育研究科修士課程に進学し、池上摩希子研究室で「子どものことばの学び」を研究。修士課程修了後は、実践の場として海外を選択し、インドネシアの高校で日本語授業のアシスタントを行う。帰国後、前出のインターナショナルスクールに勤務し、現在に至る。多様な背景をもつ子どもたちへのことばの教育とは何かを問い続け、現場から発信していきたいと考えている。

 

人生の後半をさらに充実させた識者たち

 

守口 剛さん

 

早稲田大学商学学術院の教授であり、社会人教育事業室長でもある守口 剛さんの司会のもと、スタートしたパネルディスカッション。ディスカッションの冒頭、それぞれの識者は、これまでの自身の歩みや人生の後半に対する考えなどを語りました。

 

本田 恭助さん

 

本田さん:私は2017年に花王株式会社を定年退職し、その後、再雇用制度を使って「特定非営利活動法人 日本NPOセンター」に出向しました。「日本NPOセンター」は社会課題と向き合い、解決を図るNPO法人です。こうした組織に入ったことで、これまでの自分には世間が見えていなかったことを実感するとともに、学びながらさまざまな社会課題の解決策を考えることになりました。以前より社会貢献に直結する分野で力を尽くしたいと考えていたので、現状に満足しています。ちなみにプライベートでは、「特定非営利活動法人 荒川クリーンエイド・フォーラム」というNPO法人の会員として、ゴミ拾い活動を行ったり、「一般社団法人 シニア社会学会」で、学術視点で社会課題を学んだりしています。

 

清水 孝幸さん

 

清水さん:私の本業は政治記者で、長年にわたり、おもに政治家や官僚を取材してきました。その一方、新聞で連載を持っており、地域における自らの活動などを紹介しています。この連載は80回以上にわたって掲載され、関連書籍『定年が楽しみになる!オヤジの地域デビュー』も出版されました。

以前の私は、典型的な仕事人間。平日は深夜に帰宅し、休日は疲れからゴロゴロして過ごしていました。しかし、会社を離れたとたん、孤独になるであろうことに懸念を感じたのをきっかけに、地域での活動を始めたという経緯があります。

現在、地域で行っている活動は、おもに4つあります。公民館で開かれる市民講座、地域で主催されるサークル活動、学童保育や老人ホームを手伝うボランティア、ラジオ体操や盆踊りといった地域イベントへの参加です。いずれも、定年退職後の居場所を作ることを目的に始めた活動です。

 

加藤 香代さん

 

加藤さん:現在、私は、都内にあるインターナショナルスクール「ユナイテッドスクールオブ東京」で子どもたちに日本語を教えています。当校で教え始めたのは1年ほど前からで、5年前までは公立小学校の教諭として教えるかたわら、川崎市における教育の推進などに携わっていました。転機となったのは、当時赴任していた小学校に7人の外国人児童が入学したことです。校内に新たに日本語教室をつくり、私がそこで教えることになったのですが、教諭としてのこれまでの経験だけでは通用しませんでした。

そのため、日本語教育を学べる場所を探したところ、出会ったのが早稲田大学での公開講座。多角的な視点で教育について学ぶことができ、知的好奇心がとても刺激されました。やがて「もっと学びたい」という気持ちが大きくなり、50歳で小学校を早期退職し、大学院に進学することに。大学院では自分の考えを再構築する必要があり、苦しい思いもしましたが、結果、そこで得た学びは大きな糧となりました。また、新たな学びを生かすため、インドネシアの高校にアシスタントとして所属し、現地の子どもたちに日本語を教えるという経験もしました。

「ユナイテッドスクールオブ東京」では日本語教育のカリキュラム作成にも携わっており、これも喜びの一つです。10〜20年後、自分がどのような環境にいるかは分かりませんが、きっと今までと変わらず、自分がやりたいこと、知りたいことを追っているのではないかと思います。

 

新たな学びや趣味を仕事に活かすという方法も

 

楠木 新さん

 

楠木さん:清水さんは東京新聞で80回、連載を書かれたとのこと。どのようなきっかけがあり、連載を書くことになったのでしょう?また、加藤さんが日本語教室で教えるようになった背景には、どのようなものがありましたか?

 

清水さん:飲み会の席で、自分の地域での活動がたまたま話題にのぼったのがきっかけです。新聞の「くらし面」を担当している部署の部長から、その場で「面白そうだから、新聞で連載を書いてくれ」と言われました。
地域で新しいことに挑戦するたびに新たな興味が生まれ、さらにまた新しいことに挑戦する、というかたちで連載を続けることができました。

 

加藤さん:私は外国人児童への日本語教育という、まだノウハウが確立されていない分野に対して強い関心を抱いたことが大きなきっかけです。ちょうど異動を控えた時期でもあったので、自らの学びをとおし、最後に学校側に貢献したいという思いもありました。

 

 

楠木さん:お二人とも、仕事とうまくマッチさせるかたちで新たな挑戦をされたのですね。仕事に活かせる学びや活動は、より取り組みやすいと思います。

 

あえて肩書きを捨て、“素の自分”になることが大事

 

守口さん:新しいコミュニティに参加することにハードルを感じる場合もあると思います。ハードルを乗り越える方法について、ぜひお聞かせください。

 

清水さん:私の場合、妻に「定年後、毎日家にいるのは許さない。老後に備えて、今から地域で趣味を見つけなさい」と言われ、重い腰をあげて地元の将棋サークルに入ったのが最初です。しかし、一歩踏み出してみると意外と新しいコミュニティにも馴染めることがわかり、次々と新たな挑戦ができました。
コミュニティに馴染むポイントは、あえて会社での肩書きを捨てること。会社と切り離した“素の自分”として、周囲に接するのが大切です。

 

 

本田さん:新たなコミュニティや分野に参加するのは、たしかにハードルが高いと思います。なので、まずは“きっかけ作り”をするのがオススメですね。人生の後半に自分はどうありたいのかをよく考えながら、さまざまな経験をとおして自分の適性を探ったり、住まいの近くでイベントやボランティアに参加したりしてはいかがでしょう。関心がもてることが見つかったら、説明会に参加するなど行動を起こしてみることをおすすめします。

 

 

行動を起こすことが、興味・関心を見つけるうえでの肝

 

守口さん:視聴されている方からの質問で、「自分が学びたいことのテーマがぼんやりとしています。どのようにして学びたいことを見つけるのがいいでしょう?」
というものがありました。パネリストの皆さんのご意見をお聞かせください。

 

楠木さん:まずは、さまざまな場所に足を運ぶなど、動いてみるといいでしょう。また、自分が興味のあることを見つける方法として、子ども時代に好きだったことを思い出し、できる範囲で再度やってみるという方法もあります。自分の関心ごとと結びつけながら、動いてみてはいかがでしょう。

 

 

本田さん:多様な物事に対してアクションを起こし、そしてチャレンジするのが、自分の学びたいテーマを見つける近道になると思います。アクションを起こす範囲が広いほど、出会う人の幅も広くなり、多様な話を聞くこともできるはずです。

 

加藤さん:いろいろな場所に実際に訪れることで、チャレンジをしている人と出会うことができ、そして自分の感性も刺激されると思います。人と繋がりこれからも生きていく。人との出会いを大切に、自分にとって居心地のいい場所を見つけていただきたいですね。

 

***

 

この他にも「50代から新しい学びなどに取り組むことで、視野が広がり、仕事で煮詰まった時も解決策を見いだしやすくなります。社会人としてさらに成長するうえで、学びは役立つものだと思います」といった意見も。学びは、後半の人生を充実させるだけでなく、副次的な恩恵ももたらしてくれるようです。

 

現在、早稲田大学では、50歳以上の方々を対象にしたカレッジの準備を行っています。本カレッジ構想では、本格的な教育プログラムのもと1年間学ぶことができ、人生を再設計し踏み出すための知識とコミュニティを得ることができます。ご関心のある方は、秋に説明会を開催予定ですので是非ご参加ください。説明会の情報は開催1か月前を目途に下記ウェブサイト「まなびのコンパス」に掲載いたします。

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