早稲田大学では、多くの社会人学生も学んでいます。今回ご紹介するのは、早稲田大学政治経済学部経済学科2年の宮城雅子さん。
会社員経験しかなかった宮城さんは、家業の建設業を引き継いだことで、経営者としての知識を一から身につけたいとの思いを抱き、入学を決意したそうです。
|家業を引き継ぎ、経営者としての知識不足を実感
―― 宮城さんのこれまでのご経歴について教えてください。
宮城さん:高校卒業後、母の勧めでアメリカ・ジョージア州に留学し、英語を学んだ後、短大で幼児教育を学び、日本に戻りました。でも、帰国後に待ち受けていたのは、バブルがはじけた頃の就職難。とりあえず就職したものの、やりたいこととのギャップを感じ、改めて学び直したいと考え、今度はアメリカの4年制大学に編入学しました。この時は、コンピュータやプログラミングも学べる数学を専攻しました。
その頃ちょうど、大学近くの自動車関係の部品工場が日系企業に買収され、そこでインターンとして働くようになりました。卒業後はその会社に就職して3年ほど働きましたが、経営悪化のため、別の日系自動車部品の会社に転職しました。次第に自動車部品の会社ではなく自動車メーカーで働きたいと考えるようになり、トヨタ自動車に入社して順調に働いていたのですが、父が病気になり帰国することになりました。2013年のことでした。実家が建設業を営んでいたので、家業を手伝うことになったのです。
―― 帰国後に会社経営に携わるようになり、どのような学びが必要だと感じましたか?
宮城さん:これまで従業員としてしか働いたことがなかったので、そもそも「会社を経営するってどういうこと?」という基本的なことから学ぶ必要がありました。はじめは経理業務を引き継いだり、建設現場で通訳が必要なときに出向いたりしていましたが、これまでと全く違う業界なので、手始めに簿記や工事士の資格を取得したりしました。しかし、そもそも経営者として、政治や経済といった社会全体を広く見通せる知識が不足していることで、すべてが空回りしていることに気づいたのです。そこで、経営者として社会の動向を知るためにも、政治や経済を大学で一から学びたいと思うようになりました。
|どうせ学ぶなら、最高の教育を受けたいと思い、早稲田大学へ
―― 早稲田大学の政治経済学部を受験しようと思った決め手は何ですか?
宮城さん:大学について調べ始めたところ、早稲田大学の政治経済学部に社会人入試制度があることを知りました。自分にはハードルが高いかなと最初は思いました。しかし、改めて大学で学び直すには、お金も労力も必要です。親に学費を出してもらうのとは違って、これまで自分で働いて貯めてきたお金を投資するにあたり、せっかくなら、それに見合うだけの最高の教育を受けたいという欲が出てきて、早稲田大学に決めました。
――久しぶりに大学に通うようになり、授業を受講されていかがでしたか?
宮城さん:やはり、10代、20代の時とは勉強している有難みが違いますね。社会人になってから自発的に勉強したいと考え、その機会を得られたことは本当にありがたいと思っています。しかも、「こんなハイレベルな教育を受けられるなんて」と、始めは感動しました。すごく難しいクラスもありますし、周囲にも優秀な学生が多く、「ついていけるかな?」という不安もありますが、おかげでたくさん刺激を受けています。入学当初は私が教室に入ると先生と間違われることもありましたが(笑)、次第に、ほかの学生さんたちとも同じ学びを深める“同志”という感覚が生まれてきました。
―― 社会人を経て、再び大学で学ぶことのメリットをどのように感じられますか?
宮城さん:他人から強制されるのではなく、自分で学びたいと思ったときに学びたいことを学べることは喜びにつながります。政治経済学部で学んでいることは、実際の社会と直結するので、身の回りで起きていることに深みが出てきて面白いです。入学して1年半が経ちますがあっとういう間でした。自分でも日々、成長を実感できますし、この年齢で大学入学を決断しても後悔はひとつもありません。私と同じように社会人入試で入学された学生と話をしていても、「大学生の頃は遊んでばかりいたのに、今は貪欲に勉強している」という人が多いです。
―― 政治経済学部で学んだことを、会社経営にどのように活かしていこうと考えていますか?
宮城さん:まずは、経営者として社会の動向を見ること。それから、基本的な知識として物事を論理的に捉え発信する力も経営者には必要なスキルだと思っています。今年の冬クオーターから、人事経済学の専門家である大湾秀雄先生の演習科目(ゼミ)を受講することが決まっています。家業の建設業は、過去最大の人材不足にあえぐ業界です。仕事があっても人手がないため倒産に至る会社も少なくありません。大湾先生のゼミでは、企業分析の仕方、人事や組織の制度を構築するといった基礎的なことだけでなく、データサイエンティストを育成するための教育が受けられるということで、今から楽しみにしています。
――これからますます労働人口は減少していきますから、人材確保はどの業界でも大きな課題になりますね。
宮城さん:人材不足の対策としては、女性や外国人の活躍推進、高齢者の雇用、AIの活用といったこともさけばれていますが、業界によって事情は異なります。大企業には分析チームが整っていますが、小さい会社でも個々に分析していかないと真髄は見えてこないのではと思っており、今後、ゼミで大いに研究してみたいと考えています。
――現在、リカレント教育や社会人の学び直しに注目が集まっています。社会人が継続して学ぶことの意義について、どのようにお考えですか?
宮城さん:何歳になっても学び続けることは大切だと実感しています。キャンパスでも、時折シニアの先輩たちが勉強されているのをお見掛けしますが、とてもよい刺激になっています。人生100年時代と言われる今、人は年齢に関係なく学ぶことで、成長し続けられるのだと思います。70代の萩本欽一さんが大学に入学したというニュースを耳にしましたが、今後100歳まで生きるとしたら、今学んだことを、数十年間は生かすことができますよね。
一般の社会人の場合、時間や経済的な事情で、大学に4年間通うのは難しいかもしれません。最近知ったのですが、早稲田大学にはオープンカレッジ、ノンディグリープログラムやeスクールなど、さまざまな学びの機会がありますので、自分が学びやすいタイプを選んで学ぶことをお勧めしたいです。
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大学の学部で会社経営に必要なことを学び、実社会と向き合う姿が印象的な宮城さん。はつらつとした明るい表情の裏には、日々ご自身の成長を実感した充足感が伺えます。
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